人間の安全保障としての文化芸術|衛紀生/美学出版
OTHER
2025
人間の安全保障としての文化芸術|衛紀生/美学出版
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2025
「劇場の定義を大きく変えた、社会包摂と幸福経営のレジェンド待望の書。」帯に記された言葉がすべてを物語る、「人間の安全保障としての文化芸術〜人間の家・その創造的アーツマーケティング(美学出版)」の装丁を担当させていただきました。
いまから23年前、私は24歳で駆け出しの未熟なグラフィックデザイナーでした。ひょんなことから「劇都仙台2002」を掲げていた仙台市の仕事を担当することになり、舞台技術養成講座、ワークショップ、戯曲賞、演劇専用稽古場など体系的な演劇振興策を進める中で誕生した「イヌの仇討(作:井上ひさし)」の舞台公演による宣伝美術を担当させていただいた際に、プロデューサーであり奥様である柴田英杞さんとお仕事をしたのがきっかけで、衛紀生さんに出会いました。東京公演(世田谷パブリックシアター)の際にはじめてご挨拶させていただいたのを覚えています。
そこから宮城大学事業構想学部にて客員教授を務められた時期に学生さんのデザインまわりのサポートをさせていただいた時期があり、その後、可児市文化創造センターala 館長兼劇場総監督に就任され、“文化とまちづくり”“文化と福祉社会”を中心とした「人間の家」をテーマに掲げ、普遍的かつ社会接続性の高い劇場の創造的アーツマーケティングに尽力されてこられました。就任時から宣伝美術のご依頼をいただき、今もなおコミュニケーションツールの制作をご依頼いただくまでに、可児市創造文化センターalaのみなさんとは深い絆を育んでいます。
衛さんが人生を掛けて取り組んできたすべての集大成となる著書の装丁デザインを拝命した際には、身が引き締まる思いでしたが、平成28年度(2016年度) 芸術選奨文部科学大臣賞受賞(芸術振興部門)時にプレゼントした「あしながおじさん」のモチーフを大変気に入ってくださっており、メインビジュアルにしたいというご要望をいただきました。この本が伝えている「カキの森の文化政策」をイメージソースに、多様な人々が集い、生み出す文化で森をかたちづくる様子を、マスキングアートでビジュアライズしたものです。
美学出版の黒田さんと一緒に何度も詳細を詰めながら、衛さんの想いを余すことなく反映し、この書籍が仕上がりました。アーラの館長に就任されたころ「君は大器晩成だから」とおっしゃってくださり、紆余曲折の中で、その言葉を信じて向き合ってきた私のデザイン人生において、本書の装丁をお声がけくださったことは、これ以上嬉しいことはありませんでした。まだまだ未熟な身ではありますが、衛さんが認めてくださった自分の魅力を最大化しながら頑張っていきたいと思います。衛さんも末永くお元気でいてください。ご依頼ありがとうございました。
▼推薦者
創造都市の真髄は「社会包摂型劇場」にある。
――佐々木 雅幸 氏(大阪市立大学名誉教授)
芸術は人間のためにある、社会資本としての文化芸術。
――湯浅 誠 氏(社会活動家、東京大学特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)
社会包摂でつながる人間の家、劇場がめざすものとは。
――冨田 成輝 氏(可児市長、全国市長会都市税制調査委員会委員長)
▽衛 紀生(Ei Kisei)/プロフィール
早稲田大学中退後、虫プロダクション企画演出課に勤務。ほぼ同時に演劇批評家として雑誌「新劇」等に連載を始める。70年代後半、山崎哲、渡辺えり、北村 想、竹内銃一郎らをいち早く評価して「第三世代」のネーミングマスターとなる。80年代後半からNHK BSエンターテイメント・ニュースの演劇キャスターを務め、93年に地域演劇の振興と演劇環境の整備を目的に舞台芸術環境フォーラムを設立。早稲田大学文学部講師 県立宮城大学事業構想学部・大学院事業構想学研究科客員教授を経て、2007年4月に可児市文化創造センター館長兼劇場総監督就任。2021年4月より可児市文化創造センター シニアアドバイザー兼まち元気そうだん室長に就任。
現在、独立行政法人芸術文化振興基金運営委員会副委員長 同地域文化・文化団体活動部会 部会長、特別部会部会長。文化経済学会〈日本〉顧問 東京藝術大学演奏芸術センター非常勤講師 岐阜医療科学大学非常勤講師。
全国の地域の自治体文化行政にかかわる一方で、文化庁、財団法人地域創造などの委員を歴任。あわせて、ニッセイバックステージ賞等の審査委員を務める。
平成28年度(2016年度) 芸術選奨文部科学大臣賞受賞(芸術振興部門)
主な著書:
『芸術文化行政と地域社会』(テアトロ1997年)
『これからの芸術文化政策』(劇団協出版部 1996年)
『阪神大震災は演劇を変えるか』(晩成書房 1995年)
『21世紀のアートマネジメント』(ダブルフェイス 1998年)
『地域に生きる劇場』(劇団協出版部 2000年)
Client Direction, Design, Illustration
衛紀生/美学出版 峯岸 和男(carabina inc.)